横浜裁判

 日本本土で行われた唯一のBC級戦犯に対する裁判でありながら、横浜裁判*1に対する関心はあまり高くないように思える。
 と、偉そうに書き出してみたものの、私自身法廷の星条旗―BC級戦犯横浜裁判の記録を購入するまで横浜裁判についてあまり関心を持っていなかった。*2
 さすがに地元なんで、横浜裁判の名前そのものは知っていたけれど、その具体的な内容についてはほとんど知らなかった。
 
 で、まず一冊とはいえ横浜裁判について書かれた本を読み始めて思ったのは、横浜裁判というのはかなり問題の多い裁判であったのではないかということである。

 無論、石毛事件の例を見ても判るように個々の裁判においてはかなり公正な手続きをとっているし、弁護人の努力も評価されるべきとは思うが、まず前提となるべき部分で問題があったのではないか。
 米軍の軍事委員会によって行われた横浜裁判での最大の問題が伝聞法則に関わるものである。*3
 英米法おいて反対尋問を経ていない供述書は相手弁護人が異議を述べた場合にはそのまま証拠とすべきではないというのが伝聞法則である。ところが軍事委員会はこの裁判において英米法の原則は適用できないと言い切った。*4従って元俘虜から聞き取った供述書がそのまま証拠として採用され、反対尋問を経ることなく有罪判決を言い渡すことが可能になったのである。

 第二にこれは著者の横浜弁護士会の弁護士も驚いていたのだか、判決文がついていない。つまり、どのような理由で判決が下ったのかが判らないのである。

BC級裁判に理由が付されなかったことによって、事件の論点に対する裁判所の考え方を知ることが永遠にできなくなったことを意味する。それは被告だけでなく、その事件の歴史的意味を探ろうとするものにとっても残念なことであった。
P37〜38

という著者の見解に私も同意する。

*1:はてなキーワードにもなっていないし

*2:自分のことを一般化するのはやめろとお叱りを受けそうだが

*3:以前Apemanさんの本館の方で伝聞について議論になったことがあったけど

*4:P34