徴農

 同じくid:good2ndさんのところで取り上げられている稲田朋美代議士だが、うっかりしていたけどこの人ってここで取り上げられているようなトンデモ弁論した人じゃないか。典型的な憂国系トンデモ*1だと思っているが、実際文部科学大臣になる可能性があるとしたらさすがに洒落にならない。
 大体、徴農なんぞ言い出す時点で頭の中が戦前回帰している。徴農についてはあちこちで文革ポルポトが引き合いに出されているが、文革ポルポト以前に農村重視で都市部を敵視した集団があった。
 それは旧日本軍部である。稲田朋美代議士の発言を読んでいると次の文章が連想される。

「農民が四、六時中営々耕して倦まず、寒暑風雪を冒して屈せず、質朴淳厚、世の毀誉を意とせざる如き忍耐勤倹の気風は、実に一国を維持するの元気にして又軍隊の素質に適合するものと謂はざるべからず。故に軍隊の素質を良好ならしむるは此の如き農民の気風を保持し且農民の衰亡を防止するを必要とす」(「偕行社記事」第四一三号)日本の軍隊―兵士たちの近代史 (岩波新書)より孫引き

 まあ、邪推を承知で言わせてもらえば彼女が本気で望んでいるのが、権威を批判せずに受け入れ黙々と命令に従う、いわば「忠良なる兵士」であろう。結局彼女(達)にとって教育とは「我々の言うことをきけ」と子ども達を調教することなんだろう。

*1:今考えたレッテル。主張としては、日本の社会は悪くなっている。このままでは駄目だ。私の処方する対策を使えば若者の愛国心が涵養され、景気は超回復し、特定アジアは日本の前にひれ伏し、ついでにアメリカ様に褒めていただけるようになるぞといったところ

ボランティア?

id:good2ndさんのエントリ「ボランティアの義務化」に賛成しないでもらうを読んで自分ならどのように相手を説得するか考えてみた。

 第一にid:good2ndさんのおっしゃるとおり働いた以上、報酬は支払われるべきという原則を指摘する。
 ノーワーク・ノーペイは労務管理業務で真っ先に叩き込まれる大前提だから、国が率先してその前提を崩すような真似をすることははなはだ望ましくない。第一、労働に正当な報酬を与えるというのはごく基本的な道徳だと思うのだけど。*1


 第二に働かせるためにもコストは掛かるものという基本的なことを指摘する。
 単純に考えて歩いていける距離に「ボランティア」の対象となるような介護施設等がある人は少ないだろうから、通うにしても交通費がかかるだろう。それも一日二日ではなく、例えば三ヶ月なら定期を購入したとしても万単位かそれに近い出費が必要ということだ。それも学生の自己負担にするというのならば、無料奉仕どころか金を出して働けということになる。国が負担するのであれば億単位の予算が必要になるだろうし、受け入れ先の介護施設に負担しろというのは無理筋だろう。


 第三に業務中に学生が怪我をした場合はどうするのか。
 労働災害は以前に比べれば減少しているが、それでも毎年数万件発生している。特に仕事に慣れていない人間が怪我をしやすいというのが私の経験だ。*2そうした場合、労災として認定できるのか。出来ないのなら自己負担で治療ということになる。やはり学生の負担が大きくなる。


 第四は第三点とは逆に学生が業務中に他人を傷つけてしまった場合はどうするのか。
 介護施設で「ボランティア」を行うのであればそういった可能性を考慮に入れておくべきだし、補償問題に発展した時の責任の所在も重要になってくるだろう。国の指示で行った行為の結果なのだから、国の責任になるような気がするのだか、どうなのだろう。


 結局、学生にも受け入れ側にもリスクが高いし、「ボランティア」と称する以上、何か事故があった時の責任の所在が曖昧になる可能性が高いから反対すべきと説得することなるかな。

*1:サービス残業と称されるタダ働きが横行する日本はその意味でも道徳的な社会とは言えない

*2:新入社員が単純な作業で怪我をするパターンに何度も遭っている