ハンセン病

林博史教授の「戦犯裁判の研究」をずっと読んでいるのだが、ちょうどタイミング良く(と言っていいのか悩むが)、以下の記事に気がついた。

http://blog.livedoor.jp/htmk73/archives/2659857.html
はてなブックマーク - 日本ハンセン病学会が『戦国BASARA3』の大谷吉継の設定について「偏見・差別を招く」と要望書を出す : はちま起稿

「戦犯裁判の研究」の第二部五章で取り上げられているのがオーストラリア戦犯裁判で裁かれた「ナウルでのハンセン病患者の集団虐殺事件」であったからだ。
裁判記録を林教授が発見したことはすでに2008年12月に共同通信配信されている。

 判決言い渡しのために48年11月29日から12月3日に香港で開かれた裁判の判決記録や被告の証言録によると、ナウルに駐屯した海軍第67警備隊の副長=別件で死刑=は43年7月9日ごろ、米軍の空襲で隔離中の患者が逃亡するのを恐れ、部下の兵曹長に殺害を命令。兵曹長は別の島に新設された収容所に移送すると偽り患者39人をボートに乗せ、兵士4人と軍属の船員8人が乗り組んだ海軍船が患者のボートを海上に誘導。砲撃でボートを沈没させ、水死を逃れた患者は射殺した。(共同)

「戦犯裁判の研究」では兵曹長が副長から受けた命令について法廷での証言が引用されている。この証言を読むと殺害の動機にハンセン病患者に対する強い偏見が含まれていることがわかる。

彼が私に言うには、最近、連合軍の島への空襲が頻繁になり、爆弾がらい患者の収容所にも落ちるかもしれない。そうすると何人かのらい患者が逃げだし、恐ろしい病気がほかの島民たちにうつるだろう。
中略
らい病は非常に恐ろしい病気で、潜伏期間は10年以上にもなる。さらにこの病気は一人の生涯で終わらないかもしれない。次の新しい世代にまで伝染するかもしれない。さらにつづけて、らい病はほかの伝染病とはまったく違っており、ほかの島民たちにも伝染し、かれらに多くの不幸をもたらし、もっと悲惨な状態に陥り、そしてかれらは日本人を憎むようになるだろう。らい患者たちは島民と同じ血でつながっているので、病気は非常に簡単に伝染するだろう。

「戦犯裁判の研究」P196

副長の実名が出ている部分は略した。